斎藤昌三と『月に吠える』

2017/09/16 06:59
 斎藤昌三と創作版画誌『月映(つくはえ)』の関わりについては、過去記事で記した(《『月映』と斎藤昌三》)。  『月に吠える』の刊行事情についての斎藤の認識がうかがわれる文章がある。昭和10年1月刊行の『書淫行状記』(書物展望社)所収の「書痴漫録」である。 初出は、『文藝汎論』昭和9年9月号とある。「書痴漫録」の「詩歌書の発禁」という章に次のような記述がある。 大正六年二月、感情詩社から発行した萩原朔太郎の詩集『月に吠える』は内容としても、田中恭吉の挿絵としても詩壇の名品であ..

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『月に吠える』の文献

2017/01/30 00:46
日本近代文学館の複刻シリーズの解題を3冊手に入れた。1冊200円。こうした解題は、けっこう貴重である。新聞初出のものは、小さいが、第1回目の写真版が入っている。ところで、『精選名著複刻全集 近代文学館—作品解題』(昭和48年11月4刷、初版は昭和47年6月)の『月に吠える』の解題は、伊藤信吉が書いている。複刻の元版については次のような記述がある。〔複刻について〕原本は四六判、角背紙装、アンカット本。カバー付き。挿絵一二葉。凝った造本の一つである。無削除版と削除版とでは口絵・カ..

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「愛憐詩篇ノオト」復刻版

2016/11/25 23:34
萩原朔太郎の「愛憐詩篇ノオト」の復刻版。安価であった。題字は萩原葉子。昭和37年11月、世界文庫「近代文芸資料復刻叢書第三集』。初めて見た。渋谷国忠「「愛憐詩篇ノオト」解説」が付いている。ノオトは「前後二巻」。「秋晴」は翻字すると次のようになるか。     秋晴にほひのなじみたるきみが黒髪をとくときに秋はさびしく流れ出で眸にかげなき空うつるひるすぎごろ遠きみづうみのこゝろにひたりてあたゝくもたれてありしにかすかなる窓のすきまより雲白く浮びいでゝ友だちのうたひつゝ行けるを見たり..

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伊藤信吉の田中恭吉評

2015/04/19 00:13
  *つくはえ(月映)展関連記事  過日紹介した、復刻版『月に吠える』の伊藤信吉による作品解題(『名著複刻全集近代文学館 作品解題』昭和44年4月)であるが、田中恭吉について先駆的な認識が披瀝されている。  一般的には、田中恭吉が世に知られていくのは、1970年代の後半であるが、伊藤の文章は1969年のものである。伊藤は、萩原と田中の表現の本質的相似性に注目して次のように記している。  田中恭吉がはやく亡くなったため、朔太郎との交友はごく短い時間で終わってしまったが..

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復刻版から『月に吠える』を考える(つづき)

2015/03/29 23:55
 さて、風教を害するとされた『月に吠える』所収の詩「愛憐」は、次のような作品である。 きつと可愛いかたい歯で、 草のみどりをかみしめる女よ、 女よ、 このうす青い草のいんきで、 まんべんなくお前の顔をいろどつて、 おまへの情慾をたかぶらしめ、 しげる草むらでこつそりあそばう、 みたまへ、 ここにはつりがね草がくびをふり、 あそこではりんだうの手がしなしなと動いてゐる、 ああわたしはしつかりとお前の乳房を抱きしめる、 お前はお前で力いつぱいに私のから..

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復刻版から『月に吠える』を考える

2015/03/28 12:44
 明治大正期の文学書の複刻をまとめて行ったのが、「名著複刻全集近代文学館」のシリーズであった。このほど、その解説書である『名著複刻全集近代文学館作品解題 大正期』(昭和44年4月、日本近代文学館)を読む機会があった。冒頭に「「名著複刻全集近代文学館」刊行について」という文章があって、「日本近代文学館は、明治以来今日まで百年にわたる日本の近代文学の名著を初版により複刻し、「名著名著複刻全集・日本近代文学館」として刊行することとなりました」という一文が置かれている。下段には、「全..

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