斎藤昌三は谷崎潤一郎の装幀をどう見たか

2017/09/18 00:00
 〔図版 左、斎藤昌三『書淫行状記』。右、川村伸秀『斎藤昌三 書痴の肖像』〕  今日のテーマは読書人にはよく知られていることなのかもしれないが、いちおうメモしておこうと思う。 このたび、斎藤昌三の自装本を買い求めて、その本作りのしっかりした感触にとても感動した。何冊か裸本を持っていたが、今回、美本を手にして認識を新たにした。 写真の『書淫行状記』(昭和10年1月、書物展望社)は、「漆塗研出布目装」であるが、持った感触も実にしっかりしており、この本が、本についての本だというこ..

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複刻版と退色

2017/06/25 09:53
 あるかたが、『地上巡礼』のオリジナル写真をつぶやきにのせている。少し版が大きくなった最後の2冊は、紺色に見える。複刻版では葡萄色(えびいろ)的に、赤系の要素が強まっている。これは、推測だが、退色したオリジナルを参照して作ったためではないだろうか。 過去記事《写生文の「うふヽん」》で紹介した『新写生文』ももとは、紺色系の紫だったかもしれない。 古本屋さんで、合綴した『ホトトギス』を見せてもらったことがある。背を裁断して綴じてあるのだが、表紙はオモテ、ウラともとてもきれいな状態..

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中村不折の装幀・挿絵の文献

2017/06/22 23:51
 雑誌『一寸』70号(2017年5月)掲載の岩切信一郎「中村不折の美術活動と印刷ー装幀・挿絵についてー」は、不折の挿絵、装幀についての基本文献といってよい内容である。 これまで、なんどもふれてきた石版と木版の問題にも関連する。不折といえば、漱石『吾輩は猫である』の挿絵がよく知られているが、ある図録では、すべてが石版だとなっていて当惑したことがある。 岩切の論では、そこが明確に整理されている。服部書店・大倉書店の『吾輩ハ猫デアル』の6葉の口絵、挿絵のうち、《欄干に倚って橋下をの..

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あれとこれ 複刻版とオリジナル

2017/05/04 00:02
あれとこれシリーズは、似ているようで離れている、離れているようで似ているものを二つ取り上げて比べてみるというアイデアからはじめたものだ。今回は、複刻版とオリジナルの比較である。複刻版は、研究をはじめた頃にはなくてはならぬ存在であった。第一次『明星』の複刻版は、27万円、月賦で購入していた。はたらいていたので、気軽に研究室でみるというぐあいにはいかなかった、記事はむろんのこと、図版にも関心をもった。そのころは、オリジナルを見たことがないので、複刻版の図版をコピーしていた。コピー..

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伝統的な多色木版の版面

2017/04/10 00:07
先日買った、国貞・種彦の『明烏 八編上』の表紙。いつの刷りかはわからない。顔のアップ。方向は少し変えてある。 髪の生え際に特徴が出ている。 刀を持つ手元のアップ。線と色面が区別されている。 色面の規則性のない、なんというか、モコモコした感触が木版の特徴である。もう少し、適切に描写できるようにならないといけないが。

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『學鐙』春号は、「特集夏目漱石」

2017/03/20 20:51
『學鐙』春号は、「特集夏目漱石」。 『學鐙』も月刊から季刊に移行するようだ。この春号が、漱石特集であることを偶然知って、版元に注文した。多くの人が、見開き2頁でエッセイを書いている。2篇気にかかるものがあったので、紹介しつつ、思うところ述べてみたい。研究ノートのひとつだと考えていただければありがたい。        池端俊策「ドラマ「夏目漱石の妻」で書かなかった人物達」 まず、池端俊策氏の「ドラマ「夏目漱石の妻」で書かなかった人物達」。この人は、ドラマ「夏目漱石の妻」の脚本家..

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